これは魅力的~♪VPI Aries Scout ターンテーブル

こんにちは ナックオーディオ中村です。

今日はカッコ良くて魅力あるターンテール VPI Aries Scout がやってきましたよ~。

アナログ再生+現代的なデザイン
見た目だけでも十分にカッコイイこの VPI Aries Scout ですが、システムの各所に高繊細な作りが施されていて
見どころがたくさんあるシステムに仕上がっています。

VPI Aries Scout はメーカーリリースモデルの中では下級モデルに位置するモデルですが、VPIの目指すアナログ再生の考え方がとてもわかり易く反映されているモデルです。

まずチャームポイントその1は スパイクインシュレーターの採用と薄型キャビネット
オーディオ全盛期のターンテーブルと言えば、超重量級キャビネットにゴッツイインシュレーターにサスペンション機能を持たせたスタイルが主流でしたが、VPIは剛性を持たせた軽量キャビネット本体をスパイク4点支持のリジット設置と、まったくと言っていい程に逆転の思考となっています。
MDF素材と肉厚スチールプレートを積層構造としたキャビネットは設置環境の共振を最大限分散させす事を目指しています。
昔のように重量で共振を抑え込むのではなく、共振の発生を前提に最大限にコントロールする考え方。
最近当店でも扱った finite elemente のラック作りと同じ発想ですねぇ
大型スパイクインシュレーターの先端は径3㎜くらいのボール状になっています。
スパイク受けを使う事なく、大理石ボードやガラス板設置がいいともいます。

こういったリジット設置にはターンテーブルの性能云々の前に、設置させるラックなりベースがきちんと共振対策できている事がとても重要ですねぇ
繊細なポテンシャルを引き出す為には、繊細な設置が第一条件となります。

そしてチャームポイントその2です!
VPIが絶対的に推し進めるアーム設計の思想です。
一見ありがちなスタティックバランス型のアームにも見えますが、実は軸部にベアリングの機構は一切無い1点支持なんです。
過去にも AudioCraft のACシリーズやパイオニアの一部のアームなんかにも1点支持のアームはありましたが、何れもアブソーバーに高粘度のシリコンオイルを使うオイルダンプ制御としていました。
あまりにも不安定でフラフラした状態にもなる為、高粘度シリコンオイルで落ち着かせる制御方法です。
しかし、このVPIのアームはオイルダンプ制御はありません。

軸から生えた鋭いニードルにアームがバランス良く乗っかっている状態です。

特に固定もされていないので、ケーブル部の接続を外せばスッと上に抜けてしまいます。
ホントに針の上に乗っかっているだけなんですねぇ。
しかもこのアーム、一点支持なのにラテラルバランスの機構も無いんですよ。
Audio Craft アームでもこのラテラルバランスを出すのに結構苦労したりもするんですが、ホントにラテラルバランスを取らなくていいんでしょうか??

試しにDENON DL-103を設置させ 唯一ある調整機構の針圧だけ調整してレコードに乗せてみると、あら不思議
ちゃんと水平が取れていますねぇ。

このアーム部、かなりの重量があるアームで、ニードルとの接点がアームのかなり上部にあり、アームをニードルに乗せただけでもかなり安定しています。(とは言っても一点支持ですのでフラフラしますが)

そして、メインウェイトも下方向へ重心が向かうようにこんな形をしています。
このウェイトは最終的にフリーに調整する構造ではなく、イモネジを六角レンチで絞めて固定する作りです。
先程ラテラルバランスは不要といいましたが、厳密に言えばこのウェイトの重心位置を調整することでラテラルバランスを取る事になるんですねぇ。

カートリッジの取り付けは付属する専用の治具でアライメントを取ります。

このアームには一般的なアームの針圧調整メモリや調整機構はありません。
そうなるとデジタル針圧計は必携のアイテムとなります。
基本的にメインウェイトの微妙な動かし方で針圧とラテラルバランスを調整します。
そして、アームのエンド部分にはアーム径に近い大きめのイモネジが入っており、太い六角レンチを差し込んである程度の微調整ができます。
しかし、その調整もほんの少ししか調整できませんので、やはり基本的にメインウェイトで針圧を合わせることとなります。

アームからは内部のリード線が束ねて取り出してあり、RCA端子へ変換する小箱に接続します。
小箱はただの導通変換装置です。フォノイコやトランスではありません。
この小箱への接続には 旧 MarkLevinson でも使われていた医療機器用の LEMO社のプラグが使われているんですねぇ。 いわゆるレモピンってヤツです。
こういうちょっとした所に拘りを感じますねぇ。
この配線が剥き出しの感じも、なんか繊細な機械的イメージです。

いろいろこのアームを触ってみて感じるのは、非常にシンプルで高精度に作られています。
そして、調整がすごくシビアです。
雑な言い方をすれば、レコード再生の 初級者~中級者 の方には恐らく使いこなせないと思います。
わかり易く言えば、一点支持アームのメリットとデメリットを理解しないとベストな状態でトレースしてくれないと思います。
一点支持アームのメリットについては使っているうちに理解は深まると思うのですが、デメリットを理解する上で、やはりいろいろなアームを使ってきた経験が必要なんだと思います。
一般的なスタティック型アームはもちろん、SME/SAECに代表するナイフエッジアーム、FRに代表するダイナミック型アームなどなど、各種アームの個性を理解している事がとても大事です。
ようは、一点支持アームの「ダメ」な部分をうまくカバーする使い方が必要なんだと。
そして、基本的なカートリッジのトレースを理論的に理解している事と、カートリッジにとって理想的なトレースを知る必要もあります。
特に感知レバーとバンパーのレスポンス具合と、針圧とアンチスケートの働き方を物理的、構造的に理解していないと、この一点支持のポテンシャルを最大限に引き出す調整は難しいと思いますねぇ。

ようは、上級者、ベテランさんの「感」で最終調整するアームじゃないかと。
私も短時間しかこのアームを触っていませんが、最初DENON DL-103では適正針圧を2.0g程度と位置付けて使ってみましたが、じっくり観察しながら調整すると2.6g程度の針圧を掛けた方がより繊細でベストなトレース感が出ました。
2点支持アームならカーとリッジのダンパーが吸収するであろうラジアル方向の動きにも敏感にアームが動いてくれます、針圧を掛ければ掛けるほどこの動きはよくなりますが、コンディションの悪いレコード盤ではこの針圧が仇となりスラスト方向(上下方向)に振られてしまう状態にもなるんです。
結果的にこのレコード盤再生のDL-103には針圧2.6gが一番バランスが良かったというだけで、他のレコード盤や他カートリッジではまた違った条件がでてくるでしょう。
このアームいろいろ触ってみて思うのは、調整の数値だけ合わせればいい結果が出せるアームではない気がしますねぇ。
とにかく 上級者さん、ベテランさんの腕の見せ所が多いアームです。

そして、チャームポイント その3です
このアクリル製プラッターです。
まず単純に、半透明の擦りガラスのような仕上がりが高級感あってカッコいいです!
厚みは35㎜あるそうです。
持った感じは見た目ほど重くありませんが、決して軽いわけではありません。
まぁまぁの重量です。(重量は測っていませんが。。

付属するクランパーはねじ込み式です。
プラスチック製でスタビライザーのような重さは無くけっこう軽いです。
お好みでスタビライザーを使ってもいいかもしれませんねぇ。

プラッター軸はボール状になっています。
このボールは軸に埋まっていて、ボール単体で動く状態にはなっていません。
プラッターを差し込むとゆっくり「すぅ~~」と降り、軸部の精度の高さを感じます。
プラッター取り付け時はこのボールを傷つけないように細心の注意を払って差し込みます。

チャームポイント その4
独立したモーター部です。
この大きさなんですが、かなり重量があり、ケース自体がかなり重厚な作りになっているのがわかります。
モーター駆動時に触ってみてもほとんど振動を感じません。
脚部はゴム脚になっおり、メーカーでは制振に「パッドかなんか敷いてもいいかも・・」的にコメントがあります。

モーターにはシンクロナスモーターを採用しています。
単純に言えば電力の周波数に同調するモーターです。
即ち、電力会社から供給される周波数の安定度がこのモーターの安定度に直結することになります。

電力の周波数に同調するのであれば、当然ですが東西でプーリーを変える必要があります。
50/60Hz 2種類が付属します。

プーリーの細い方が33PRM 太い方が45RPM 別途オプションで75PRMもあるみたいですねぇ。
基本的にモーター自体にピッチコントロールは無く、このプーリーが上と下で微妙なテーパーになっており、ベルトの掛ける位置で回転の微調整ができます。
実際にほんとにちょっとだけ調整範囲です。
もっと繊細なピッチコントロールと電源の安定が必要な場合は別途オプションのクオーツ搭載の電源コントロールアイソレーションシステムがあるようです。

ストロボで見ると回転自体の安定度は非常に高いのが実感でき、手で軽く負荷を与えてもビクともしないモータートルクも感じます。
モーターの性能自体が優れているのがわかります。
が、、、、 やはりシンクロナスモーター独特の「カクカク・・・」した感じの制御も同時感じますねぇ。多少ですけど。。
上級モデルにモーターを2基使ってイナーシャフライホイールを使った意味が分かります。
まぁ、そこまでしなくてもと思える程度ですけど。
でも これってプラッターをスタビライザー追加して重量上げて「糸ドライブ」にすれば良くなるんじゃないかなぁ。 なんて思います。

今日一日 この VPI Aries Scout をいろいろ触ってみて
このターンテーブル トータルのシステムで見て かなり面白いですよ~
使いこなすほどに魅力が増える感じがするシステムです。
もっと高解像度の軽針圧カートリッジで試したら さらにいいんじゃないかなぁ。
いいなぁ VPI 。
是非 上級機の VPI HR-X も触ってみたいなぁ~~