個性派ヘッドシェル SAEC/ULS-3、Victor/PH-L1000、AudioTekne/CH-7

こんにちは。
ナックオーディオ中村です。

今日は個性あるヘッドシェルのお話ッス。

ヘッドシェルはアナログファンにとってはカートリッジ、アームに続く「マニア度」の高い部位かもしれません。
安く済ませようと思えば低価格のシェルも多数ありますが、拘り始めれば上限も無く、改造や自作等の面白味のある部位でしょう。
マグロで例えれば(なぜマグロ?wwww)
カートリッジが「大トロ」であればアームは「中トロ」、モーターは「赤身」、概ねキャビネットは「食べ方/調理法」とでも言いましょうか?
そして、ヘッドシェルを例えれば「カマ」的存在かなぁ。。。
アナログ再生のメイン部位では無いながらも、好きな人は逃さない部位でしょう。
やはり、お気に入りのカートリッジを手に入れたのなら、お気に入りのシェルにセットしたいものですねぇ。

そんな感じで 私のお気に入りのシェルを紹介します。

AudioTekne/CH-7 カーボンヘッドシェル
SAEC/ULS-3X セラミックシェル
Victor/PH-L1000 セラミックシェル

まずは、SAEC ULS-3X セラミックシェル

*********************************************************************************
酸化アルミニウムを焼結させた超硬度、超高密度、高純度(99.7%)のヘッドシェル。
サファイアやルビーより固く、一瞬のパルスも減衰させずに音楽信号として送り込みます。
*********************************************************************************

SAECの人気アーム WE-407/23やWE-506/30の付属していたシェルでもあり、中古市場でも球数が多い人気のシェルです。
程度の良いモノだと2万円台後半~3万円くらいの価格相場となっていて、1978年販売当時の定価\12,500のおおよそ倍近い価値となっています。
製造時期によりセラミック素材が異なります。白のやや半透明タイプと透け感の無い白タイプがあります。
半透明タイプは接点がロジウムメッキの仕様、白タイプは金メッキになっています。
また、上側に取り付けるアルミプレートの形状が面取りしてあるモノや穴開きのモノもあります。
詳細についてはわかりませんが、SAECの製造部門が分裂した時代と高度経済成長時代のコストの問題なのかもしれません。

私個人的に気に入っている理由は、カートリッジの持つ「輪郭表現」のポテンシャルを良く引き出してくれます。
ワイドレンジで軽針圧のMCカートリッジとの相性は抜群です。

続いては Victor PH-L1000 セラミックシェル
当時Victorのハイエンド LaboratoryシリーズとしてリリースされていたMCカートリッジMC-L1000とのマッチングを重視して開発されたシェルです。
炭化珪素ファインセラミック素材で作られ、先のSAEC ULS-3Xよりさらに高強度な素材です。
SAEC ULS-3X が比較的「陶器」っぽい素材に対し。Victor PH-L1000 は「鉱石」っぽい感じです。
上面を鏡面仕上げにしてあったり、上部のプレートフックはジェラルミン素材だったりと、贅沢感があります。

このシェルの特性は先のSAEC ULS-3X に似ていますが、より一層にカートリッジの持つ表現をタイトでストレートなモノにします。

80年代後半の販売時期で当時価格は¥15,000程度
ハイエンドと呼ぶほど高価ではなかったのですが、販売された球数が非常に少なく、希少価値が高くなっています。
中古市場でもレアモデルとしてコレクターアイテムとなっています。

続いては AudioTekne CH-7 カーボンシェル

AudioTekneさまは真空管アンプはじめ、国産のガレージメーカーです。
知らない方も多いと思いますがねぇ。

このカーボンシェル
単純に言えば「鉛筆の芯」のようなモノです。
モーター等で使われるコイル接点に使われるブラシ部分に使われるカーボン素材に近いらしいです。
AudioTekneさま曰くでは、「カートリッジの針鳴きが減少」とあります。
実際に使ってみると、カートリッジ本体との相性がかなり左右する感じです。
BENZ MICROのような「剥き出し系」カートリッジではあまり効果を感じませんが、DENONのDL-103はじめプラスチックケースに収まるタイプのカートリッジではストレートさは増します。
また、光悦のようなカートリッジケース自体が音作りとして作られているカートリッジでは「ナロー」になり過ぎます。
共振を抑える効果は実際にあると思いますが、カートリッジ本体の形状や素材、また、重量や針圧等で差があります。

と、これだけカートリッジとの相性で音の変化が楽しめたシェルって 正直あまりなかったんですよねぇ。
カートリッジとの相性が合えば抜群に良いシェルですが、逆に言えば相性が悪ければ安物シェル以下って事にもなり兼ねない。
なんとも「腕試し」的な魅力あるシェルなんです。

それぞれの重量を測ってみました。
参考までに人気の軽量シェル SME S-R2 が約5.5gです。

ご紹介した3点のシェルも決して軽量シェルではありません。
マッチングのカートリッジにもよりますが、SMEショートアーム等をはじめとした軽量タイプのスタティックバランス型アームよりには向いてない感じがします。
FR-64/66等のダイナミックバランス型では更なるポテンシャルも期待できますねぇ。
カートリッジとの相性だけでなく、アームの特性との相性も重量から考える事も必要です。

いろいろ考察してみると、アナログってやっぱり「腕」が必要なのだと、改めて思いますねぇ。
物理的に理解する事はもちろんですが、「感覚」としていろいろなマッチングや加減が必要ののでしょうね。