LUXMAN ラックスマンSQ-38u EL34出力管交換とバイアス調整

こんにちは。
ナックオーディオ中村です。

いやぁ~
ここ東京も先日の雪に見舞われ、本格的に寒さが身に沁みますねぇ。
今週末にはまた東京にゆきが降るなんて言われてますし、来週いっぱいまでまだまだ寒い日が続くようです。
こんな寒い日は家に引きこもって オーディオ機器のメンテナンス なんて方も多いんじゃないでしょうかねぇ

今日は LUXMAN ラックスマンの真空管アンプ SQ-38u がやってきましたよ。

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SQ-38u どこかで聞いたようなモデル?
そう ラックスマンでは83年に38シリーズとして「LX38u」をリリースしております。
過去には初期のSQ38Dをモチーフとした復刻として台数限定でSQ-38Dをリリースしていましたが。
今回のSQ-38uはLX38uの復刻モデルではなく、新たな真空管アンプとして発売されました。
EL34(6CA7)プッシュプルの構成は 20年前くらいに出た SQ-38 Signature を思わせます。

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ウッドケースに収まる箱型真空管アンプの見た目を裏切る リモコン付き!
さすがにそこはボリュームとミュートのみの操作です。
これで電源のON/OFFやラインセレクトも出来たらすごいですが、それはそれでアナログ感が削がれますし。。

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さっそく中身を見てみましょう。
パッと見で シャーシの作り込みが手が込んでます。
細かな個所にもすべて塗装がされています。
基盤をフルに使う事により、真空管アンプの「手配線」の臭いが一切しませんねぇ。
チョークコイルの見た目がチョイと安っぽい感じかなぁ。。。

私がとても好印象に思ったのが フォノ段に ECC83(12AX7)を使用し、MCトランスを搭載しているあたり。
おそらくはレコードをもう一度聞きたい人をターゲットとして考慮しているのではと思います。
レコード入門としても、ある程度カートリッジに拘りたい方も十分満足できるでしょう。

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前段球のシールドケースにもシャーシと同色の塗装がされている!

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ラックスマンでは出力管 EL34 に ロシア製SOVTEC社と言っていたが、エレハモ Electro-Harmonix が設置されている。
まぁ、製造元はソブテック社で間違いないが、エレハモと言うとイメージ的に安っぽい感じがするからかなぁ。
別にエレハモが悪い真空管とは言わないが、ギターアンプ用ってイメージとコストパフォーマンスが売りのブランドイメージが強いからなぁ。
どうせエレハモで行くんだったら 太管の 6CA7EH を選べば面白かった気もする。

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GMを見ても まだまだ健全でしばらく使用に問題ないが
使用感からして5割程度といったところ。
さんざんエレハモの事を言ってしまったので、このまま元に戻すのも忍びない。。。。

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以前 興味半分で購入していた 復刻 Mullard EL34(ロシア製)があったので、これで行くことにします。
口コミでは中々評判の良いこの復刻ムラードEL34
エレハモよりは間違いなく良い傾向になると思います。

この「EL34」という規格の真空管には いろいろな歴史があって、同規格として 6CA7 という型式も存在します。
判りやすく言えば EL34 はヨーロッパ式 6CA7 はアメリカ式 と言った感じ。
管自体の作りは EL34 と 6CA7 では大分違いはあるが 適合性としてほぼ数値的に同じ特性を持っている為
6CA7として販売されていたEL34、EL34として販売された6CA7 等々、いろいろ世界中に混在します。
結果として どっちがどっち とも統一無く「EL34/6CA7」というWネームで呼ばれます。

EL34の本家と言えばPhilips社であり Mullard/TELEFUNKEN が有名どころ
6CA7の本家と言えば RCA社であり GEあたりが有名どころ と言った感じです。
そして、忘れてはいけないのは
日本がまだ高度経済成長の時代には海外からの受託として 松下や日立、東芝がEL34を作りまくっていました。
中でも松下製は製品精度が非常に高く、世界的に高く評価されていました。
製品の特性にバラつきも少なく、同ロットで作られた管はほとんどマッチングに問題無いレベルで、ロットがそろった松下製EL34は今で根強い人気があります。

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続いて 底面です。
パッと見で「ザ・基盤っ!」って感じです。
ソケット周辺では手配線も披露していますねぇ。
線の処理や納め方がなんとも見事です。
ラックマンには今でも器用な「真空管アンプ職人オヤジ」が存在するのがわかります。

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トランス軍には特に型番は割り振られていません。
40年前なら、このアンプの「キット版」も出されていたのかなぁ。なんて思います。

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ここから先の内容につきましては、あくまで記事として簡単にまとめたモノです。
バイアス調整を自身で行う事を推奨している訳ではございません。
ご自身で機器に手を加える場合、故障や事故の可能性をご考慮ください。
また、ご自身で機器に手を加える事は「改造」にあたる為、メーカー保証が受けれない場合もございます。
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EL34の場合 出力管を交換した際には「ほぼ」バイアス調整が必要となります。
「ほぼ」と言うのは、一部のアンプや設計では自己バイアス回路や、もともとバイアス調整を必要としない使われ方をしているアンプもあるから「ほぼ」と言わせてもらいましたが、
まぁ、ほとんどの三極管アンプの場合、バイアス調整は必要になります。

真空管アンプに抵抗ある方のほとんどは この「バイアス調整」という壁に難色を示します。
わかる人には「なんてことない」わかない人には「未知の作業」
これが「バイアス調整」シンドロームとでも言いましょうか。

前もって言いますと、この記事で「バイアス調整」についての説明は一切しません。
と言うか。。 説明しきれません。
作業的にはボリューム(ポッド)を回すだけなんですが、「何」を基準に回すかなんです。
その「何」を知る為には最低でも知らなきゃいけないことが数点あります。

電気、電子の基本的知識(プラス、マイナスと電子の関係、交流と直流の基本)
真空管の基本的な構造、特性(増幅の意味)
回路の基本構成と使用部品のスペック(抵抗~トランス~コンデンサ類 etc,,)
オームの法則(電流、電圧、抵抗の関係)
計測器(テスター)の基本的な使い方

まぁ、最低でも上記程度はわかっいないと事故の元です。
上記のことを簡単に思える方は、バイアス調整云々以上に、自分で設計した真空管アンプくらい作れるでしょう。

バイアス調整とは 知ってる人は当たり前に知っている 知らない人は全く知らない
そんな高いハードルがあります。

しかし、今回は「バイアス調整」って こんな感じ 程度に記事にしてみます。
この記事を読んで「ちょっと勉強してみよう」なんて思ってくれたらうれしいかなぁ。

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まず、このアンプ「プッシュプル」という構成で成り立っています。
略して「PPアンプ」なんて言われたりもします。
超が付くほど簡単に言えば、EL34出力管4本を2本2本でL側R側を受け持っています。
左から1.2.3.4と番号を振れば、1と2でL側ch、3と4でR側chを受け持ちます。

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「バイアス調整」の「調整」する個所は写真○印の調整ボリューム(ポッド)
ドライバーの+プラスの形があります。

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この調整用ボリュームを回す際には必ず専用の調整ドライバーを使ってください。
普通のドライバーでもできない事はありませんが、かなり「リスク」があると思ってください。
金属ドライバーを使って万が一、他の電極部分に触れると、とんでもない事故になります。
真空管アンプには見た目からは想像できないくらい高い電圧が流れている場所があります。
機器が壊れるだけならまだしも、感電事故もおおげさではありません。
わたしも ついうっかり手が触れて、髪の毛が逆立った経験がありますんでww
いやいや ホントですから。
あと、超々精密機器の基板上なんかだと、金属ドライバーを差し込むだけで周波数や磁気に影響があって、調整に差し支える事もあります。
なんで、こういった電子回路の調整には必ず調整用ドライバーを使いましょう。
むかし私は竹箸を削ってドライバーを自作したこともありますが。。。
安いモノで200~300円で売っているモノもあれば、高級なセラミックドライバーなんてものあります。

この調整を行う時には 必ず回路に基本的な「無」の状況を作ってください。
今回のSQ-38uの場合、プリメインとセパレートの切り替えが有ったので、セパレートにします
スピーカー出力切替も ON/A/B と切替があるので OFF に ボリュームも無に
(アンプによってはスピーカーに接続するか、仮想的に8Ω程度の抵抗を置くモノもあります)

先程説明のとおり 1chを2本の管で増幅している為、2本の管は連動していると思ってください。
片方を調整すれば、もう片方も連動して数値が変わります。
どちらの管が初段なのかによって、回す順番も異なります。
「回す」と言っても グルグル回すわけではなく、極々微量だけちょっとずつ動かしながら、2本の組み合わせの数値を合わせていきます。

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そもそも「バイアス」って何?
プレート電圧、カソード電圧、グリッド電圧、ヒーター等々。。。。。。
もう、この記事では説明しきれませんので スーパー省略します。

端的に 写真中の ココ の抵抗値を測定します。
ちなみに、抵抗にはシマシマの「柄」が入ってます、このシマシマの色を合わせるとこの抵抗値が読めます。
この抵抗に流れる電圧(電流)がずばり「バイアス」です。(超説明不足で)

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見る人が見れば説明不要なんですが。。。
ここも超省略して。。。。
EL34には8本ピンがあります。(6番は不要)
8番と1番を短絡させ、本体グランドに落とします。
その間に任意の抵抗を置くと、その抵抗に・・・・・。。 とにかくわかるんです!
今回SQ-38uには10Ωの抵抗が設置されいますが、別に1Ωだったとしても特に問題ありません。
その意味をどうしても知りたい方は 別途に真空管の構造を勉強してください。

一応追記しておくと、この測定方法が「本筋」かと言えば、実は「仮想的」な測定なんです。
う~~ん。その理由も難しいので省略しますが。。。。
今回のSQ-38uを見たとき、すでにこの抵抗が用意されていたので、恐らくメーカーも「それで良し」としているであろう、と解釈していますので。その流れでいきます。

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本来なら、この抵抗の値を測定する場合、抵抗の両端をテスターで測るのですが
バイアス電圧(電流)の測定程度でしたら、スピーカーのマイナス側端子やフォノのアース端子でもOKとします。(便利なんで)

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この SQ-38u のバイアス電流値を 35mA 程度 とします。
なぜ?
そう聞かれても、前述同様に説明しきれませんので超省略します。
(メールやお電話等でお問合せされても説明できませんのでご了承ください)
(説明が必要な方はラックスマンに直接バイアス調整をご依頼ください)
他のEL34アンプも35mAですか?
そんなのわかりません。
そのアンプの回路はじめ、使用部品の限界値や、そもそもの設計意図など、アンプによって全く違います。

とにかく 35mA です。

テスターで見ると 350mV です。

さんざんここまで説明を省略しましたが、少しお勉強だと思って先生気分で問題を出します。

35mA = 0.035A       350mV = 0.35V     抵抗 10 Ω

オームの法則
電圧(V) = 抵抗(R)× 電流(I)
電流(I) = 電圧(V)÷ 抵抗(R)

頭の体操だと思ってくださいねぇ。

そもそも「バイアス値」を「電流」呼ぶか「電圧」と呼ぶか
どっちでもいいんです。

さて
今日の授業はここまでです。

Mullard EL34 換装後の実力を エージングを兼ねて少し試します。
しばらくエージングさせオシロスコープにて波形を見てみます。
その時はまた、報告しますね。